えっ、こんなことまで? AIの面白い&意外な活用事例21選!

AI基本のキ

AIというと、SF映画に出てくる人間のようなロボットや、なんだかすごく難しいプログラミングの世界を想像されるかもしれませんね。でも実は、AIはもう私たちのすぐ隣にいて、思いもよらない形で日々活躍しているのです。普段何気なく使っているスマートフォンのレコメンデーション機能や音声アシスタント、部屋を自動で掃除してくれるお掃除ロボットなど、身近な製品やサービスの中にAIが組み込まれています。

今回は、「えっ、そんなことまでできるの?」と思わず声を上げてしまうような、AIの面白い、そして意外な活用事例をたっぷりご紹介します。

想像を超えたクリエイティブ:AIが生み出すアートとエンタメの新しい形

AIは、効率化や自動化だけでなく、アートやエンターテイメントといったクリエイティブな分野でも、人間の想像力を刺激し、新たな表現を生み出す力を持っています。これは、AI、特に画像生成AIや音声合成AIなどが、膨大なデータを学習することで、既存のスタイルや文脈を理解し、それを応用して新しいコンテンツを「生成」する能力を獲得しているためです。これにより、人間だけでは思いつかなかったアイデアや、失われた表現の再現などが可能になりつつあります。

名画の拡張とアニメーション化

Adobe Fireflyのような画像生成AIは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」など歴史的な名画のスタイルを学習し、キャンバスの外側を自然に描き足すことができます。さらに、TikTokの「MagicAnimate」機能のように、静止画である「モナリザ」をまるで生きているかのように動かす動画生成技術も登場。歴史上の人物の肖像画をリアルな写真のように再現する試みも、AIの創造的な応用例といえるでしょう。

▲TikTokの「MagicAnimate」機能

CM制作とAIタレント

広告の世界でもAIは活躍しています。サントリー食品インターナショナルは、「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」のWebCM制作で、企画段階から生成AIに相談し、ユニークなアイデアを得ました。また、伊藤園の「お〜いお茶 カテキン緑茶」のCMには、AIによって生成された「AIモデル」が出演。実在しないためスキャンダル等のリスクがなく、企業にとってメリットがあると考えられています。テレビ番組で活躍するAIアナウンサー「荒木ゆい」のように、自然な話し方でニュースを読むAIも登場しています。

音楽・ダンス・脚本制作

AIによる自動作曲や、音楽に合わせたダンス振り付けの自動生成(例:南カリフォルニア大学の「AI Choreographer」)も研究されています。映画の脚本アイデア出しや予告編の自動作成など、物語作りの分野にもAIが進出しているのです。

故人の歌声再現

特に印象的なのは、ヤマハの歌声合成技術「VOCALOID:AI」を用いて、故・美空ひばりさんの歌声を再現し、新曲「あれから」としてリリースした事例。AIが膨大な音声データを学習し、独特の歌い回しまで忠実に再現しました。これは、AIが失われた文化遺産を現代に蘇らせる可能性を示唆します。

これらの事例が示すように、AIは単なるツールを超え、「創造的なパートナー」としての役割を担い始めています。AIが持つ「生成」能力は、クリエイティブな作業のハードルを下げ、誰もが表現者になれる可能性を秘める一方で、著作権や肖像権、ディープフェイク(AIによる偽動画・画像)といった倫理的な課題も提起しているのです。

日常がもっと便利に、もっと楽しく:暮らしを変える意外なAIアシスタント

AIは、アートやエンタメだけでなく、私たちの毎日の暮らしの中でも、生活をより便利で快適にする意外なアシスタントとして活躍しています。AI技術、特にセンサー技術やデータ分析能力と組み合わせることで、これまで人間の経験や勘に頼っていた家事や育児、健康管理といった領域でも、きめ細やかなサポートが可能になっているからです。

ユニークなAI搭載家電

皆さんのご家庭にも、AI搭載の家電がすでにあるかもしれません。

  • 専門的な職人技を再現: お菓子メーカーユーハイムのバームクーヘン専用オーブン「THEO」は、熟練職人の焼き方をAIが学習し、完璧な焼き上がりを実現します。
  • キッチン家電の進化: シャープの「ヘルシオ」は、話しかけるとAIが献立を提案したり、最適な温めモードを教えてくれます。最新の冷蔵庫には、庫内の食材をAIが認識・管理するものや、洗濯機には衣類の量や汚れに応じてAIが最適な設定を行うものもあります。
  • 未来のヘルスケア?: スタンフォード大学では、トイレ使用者の「肛門のシワ」をAIが認識して個人を特定し、排泄物から健康状態を分析するスマート・トイレの研究も進んでいます。

子育て・ペットとの暮らしサポート

AIは、言葉でコミュニケーションをとるのが難しい相手との間でも活躍します。

料理の腕前アップ支援

料理の世界でもAIは活用されています。ケンブリッジ大学では、人間の料理動画を見てレシピを学習し、再現するだけでなく、オリジナルレシピまで考案する料理ロボットが開発されています。より身近な例では、AIに週の献立を相談すると、買い物リストを自動作成してくれる「ミーニュー」などのアプリやサービスなどもあります。

これらの事例からわかるように、AIはバームクーヘンの焼き加減や赤ちゃんの泣き声の意味、ペットの健康状態といった、従来は数値化しにくかった「暗黙知」(経験や勘に基づく知識)の領域にまで踏み込んでいます。AI、特にディープラーニング(深層学習)が大量のデータから人間が気づかないパターンを見つけ出す能力により、よりパーソナルで細やかなサポートが可能になっています。しかし、こうした「人間らしい」領域へのAIの介入が、私たちの感覚や人間関係にどのような影響を与えるか、という問いも生じているのです。

「えっ、そんなことまで?」ユニークな問題解決に挑むAIたち

AIの応用範囲は非常に広く、日常生活の不便解消から社会課題、文化継承まで、驚くようなユニークな問題解決に活用されています。AIが持つ高度な画像認識能力、音声認識能力、データ分析能力、パターン発見能力などが、これまで人間だけでは解決が難しかったり、見過ごされたりしてきた様々な課題に応用できるためです。

AI鑑定士:ニセモノを見破る眼

高級ブランド品の偽物を見抜くのはプロでも困難ですが、中古品販売のコメ兵では、AIを活用した真贋判定システムを導入しています。スマートフォンのアプリと専用デバイスで、商品の微細な特徴をAIがデータベースと照合し、高精度で真贋を判定する「Entrupy」のようなサービスもあります。

姿勢チェックAI:あなたの健康をサポート

カメラ映像からAIが関節の位置を読み取り、姿勢の歪みをスコア化する「Posen」のようなシステムは、健康維持やビジネスシーンでの印象改善に役立ちます。

意外な防犯・不正防止への活用

神社の賽銭泥棒特有の動きをAIが検知して通知する防犯カメラや、試験会場でのカンニング行為をAIが監視するシステムも開発されています。公平性を保つための技術ですが、常に監視されているようで少し怖いと感じる人もいるかもしれません。

多言語対応と地域情報提供の進化

香川県三豊市では、ゴミ出しルールに関する問い合わせに、50カ国語以上に対応するAIチャットボットで自動応答する実証実験を行いました。これは、外国人住民への情報提供と市役所の業務効率化に繋がります。

地球環境の保護に貢献するAI

深刻化する環境問題にもAIが貢献しています。

  • 森林・海洋の監視: NPO「Rainforest Connection」は、古いスマホとAIを活用し、森林内の音声から違法伐採の音(チェーンソーなど)を検知するシステムを運用。NOAAとGoogleは、海中の音からAIでザトウクジラの鳴き声を識別し、保護活動に役立てています。
  • 資源の最適利用: オーストラリアのThe Yield社は、AIによる高精度な天候予測で農業用水や肥料を最適化し、資源の有効活用と収穫量向上を実現しています。

伝統工芸の継承を支援するAI

後継者不足が課題の伝統工芸分野でもAIが活躍。過去の作品データを学習し、新しいデザイン案を生成したり(例:朝日焼)、職人の技をAIが学習して品質管理や技術伝承を支援する試み(例:熊野筆の検品)が進んでいます。AIは「暗黙知」である熟練の技を「形式知」(言語化・マニュアル化された知識)に変え、未来へ繋ぐ役割を担い始めています。

▲熊野筆の検品に関するYouTube

これらの多様な事例は、AIが診断能力を日常の様々な情報(顔写真、姿勢、音声、テキスト情報など)に応用し、健康リスクの早期発見や原因不明の症状に対するヒント(例:ChatGPTによる難病診断支援)を提供する可能性を示しています。また、AIは社会の安全(防犯)、環境保護、文化継承のための能動的な「見張り役」「最適化役」としても機能し始めており、より安全で持続可能な社会の実現に貢献する可能性を秘めています。ただし、AIによる診断は補助的なものであり専門家の判断が必要である点や、監視社会への懸念にも留意が必要です。

業務を裏から支える意外なAI活用

AIは、目立つ製品開発だけでなく、日々のビジネスオペレーションの裏側でも、業務の効率化や高度化を支える重要な役割を果たしています。AI技術、特に自然言語処理、画像認識(OCR含む)、データ分析などの能力が、採用活動、事務処理、顧客対応、専門的な分析といった、ビジネスにおける様々な定型業務や判断業務に応用できるためです。

採用活動支援:客観性と効率性の向上

ソフトバンクなどでは、応募者の録画動画をAIが分析・評価するシステム「harutaka IA」を導入。履歴書の自動スクリーニングや、オンライン面接時の候補者の分析などにもAIが活用され始めています。これにより、採用担当者の負担を軽減し、より客観的な選考を目指しています。

手書き伝票の自動読み取り:驚異の認識精度

佐川急便では、AIを活用したOCR(光学文字認識)技術により、手書きの配送伝票を高精度(99.995%以上)で自動データ化し、大幅な工数削減(月8400時間)を実現しました。AI-OCRは、かすれ文字や修正箇所も認識できます。

スポーツ界での専門分析:パフォーマンス向上から判定補助まで

プロスポーツでは、AIによるデータ分析が常識となりつつあります。

  • 選手強化と戦略: AIが選手のパフォーマンス(フォーム、疲労度など)を分析し、改善点や怪我リスクを提示。対戦相手の戦術パターン分析や戦略立案にも活用されます。
  • 公平な判定のサポート: テニスの「ホークアイ」やサッカーの「VAR」はAIによる画像解析で正確な判定を支援。ボクシングでもAIカメラを用いた採点システムが導入予定で、eスポーツでもAI活用が進んでいます。

顧客対応のスマート化:迅速な解決と負担軽減

AIチャットボットによる24時間自動応答は広く普及。KDDIでは生成AI搭載チャットボットで問い合わせ解決時間を短縮。トランスコスモスでは、AIがオペレーターに回答候補を提示し、上司への相談(エスカレーション)を6割削減しました。金融業界では、クレジットカードの不正利用検知や融資の与信審査にもAIが活用されています。

ビジネスにおけるAI活用は、会議の議事録要約やメール作成支援のような「誰でも使える汎用ツール」と、金融のリスク分析や製造業の不良品検知、スポーツ分析のような「専門家を支援する高度なツール」の両面で進んでいます。これはAI技術自体の進化と特定分野への最適化技術の進歩によるものです。企業は自社の課題に合わせてAI導入戦略を選択し、特に高度なAIを活用する場合は、それを使いこなすための人材育成(AIリテラシー)が不可欠となります。

防災・減災にもAIの力を:私たちの安全を守る最新技術

自然災害が頻発する日本において、AIはそのデータ分析・予測能力を活かし、防災・減災対策の分野で私たちの安全を守るための最新技術として導入が進んでいます。AIは、過去の膨大な災害データやリアルタイム情報を統合的に分析することで、災害の発生予測、被害状況の迅速な把握、そして個々の状況に応じた避難支援などを可能にし、人命救助や被害軽減に貢献できるためです。

災害予測AI:早期避難への貢献

富士通研究所などは、AIを用いた津波被害予測シミュレーションで、効果的な避難計画立案を目指しています。NTTグループは、AIで台風による通信設備の被災確率や復旧に必要なリソースを予測。香川県高松市では、AIが河川水位をリアルタイムで予測し、早期避難指示に繋げています。

リアルタイム状況把握・共有AI:迅速な対応のために

災害発生時、SNSの投稿やドローン・衛星画像をAIが解析し、被害状況を迅速に把握・可視化します。LINEヤフーと防災科学技術研究所(NIED)は、LINEを通じて被災者から情報を収集し、AIが分析して防災機関と共有する仕組みを構築中です。

避難支援AI:一人ひとりに最適な情報を

AI避難支援アプリは、利用者の現在地や災害情報、避難所の状況などを分析し、最適な避難場所と安全な経路を提示します(例:アバナード社のアプリ)。Spectee社のAI防災チャットボットは、LINEで災害リスクや避難情報を通知し、行動を促します。

緊急通報支援AI:救命率向上を目指して

兵庫県姫路市消防局では、119番通報の会話をAIがリアルタイムでテキスト化・解析し、緊急性の高いキーワードを抽出。司令員に必要な情報や対処法を提示し、迅速・的確な対応を支援します。

AIの防災活用は、災害予測、リアルタイム分析、個別避難支援といった機能を通じて、社会全体のレジリエンス(回復力)向上に貢献する可能性を秘めた、「プロアクティブ(先見的・積極的)」な取り組みです。しかし、通信網途絶時のAI機能停止リスクや、AI予測の限界、専門人材の育成といった課題も存在します。

AIの意外な活用事例まとめ表

カテゴリ (分野)活用事例例簡単な説明
クリエイティブ名画の拡張・アニメーション化AIが有名絵画のスタイルを学習し、続きを描いたり動かしたりする
クリエイティブAIモデル・AIアナウンサーAIが生成した人物がCM出演したり、ニュースを読んだりする
クリエイティブ故人の歌声再現(例:美空ひばり)AIが過去の音声データから歌声や歌い方を学習し、新曲などを歌わせる
日常生活(趣味・家事)バームクーヘン専用オーブンAIが職人の焼き方を学習し、最適な焼き加減を実現
日常生活(趣味・家事)AI搭載キッチン家電(例:ヘルシオ)AIが献立提案や最適な調理モード選択などをサポート
日常生活(育児・ペット)赤ちゃんの泣き声診断AIが泣き声のパターンから感情(空腹、眠気など)を分析
日常生活(育児・ペット)ペットの顔写真から病気予測AIが顔写真の特徴から将来の病気リスクを予測
問題解決(鑑定・分析)ブランド品の真贋判定AIが商品の画像を分析し、本物か偽物かを高精度で判定
問題解決(鑑定・分析)姿勢チェックAIAIがカメラ映像から姿勢の歪みを分析し、スコア化
問題解決(防犯・インフラ)賽銭泥棒の検知AIが賽銭箱周りの不審な行動パターンを検知して通知
問題解決(防犯・インフラ)多言語ゴミ出し案内チャットボットAIが多言語でゴミ出しルールなどの問い合わせに自動応答
問題解決(環境・文化)違法伐採の音声監視AIが森林内のマイク音声からチェーンソー音などを検知
問題解決(環境・文化)伝統工芸の技術継承(例:熊野筆の検品)AIの画像認識で熟練職人の「眼」を再現し、品質管理と技術伝承を支援
ビジネス(業務効率化)手書き伝票の自動入力(AI-OCR)AI-OCRが手書き文字を高精度で読み取り、データ入力作業を自動化
ビジネス(業務効率化)採用活動支援AIが履歴書スクリーニングや面接動画分析などを補助
ビジネス(業務効率化)顧客対応支援(例:オペレーター支援AI)AIがオペレーターに最適な回答候補を提示し、問題解決を迅速化
ビジネス(専門分野)スポーツ分析・審判支援AIが選手のパフォーマンス分析、戦略立案、審判判定などを支援
ビジネス(専門分野)金融不正利用検知・与信審査AIが取引データや顧客データを分析し、リスク検知や評価を行う
防災・減災災害予測(例:河川水位予測)AIが気象データなどを分析し、災害の発生や規模を予測
防災・減災リアルタイム状況把握(例:SNS解析)AIがSNS投稿やドローン映像から被災状況をリアルタイムで分析・可視化
防災・減災AI避難支援アプリAIが災害情報や現在地に基づき、最適な避難経路を案内
防災・減災緊急通報支援AIが通報内容を解析し、司令員に必要な情報や対処法を提示
医療(診断支援)ChatGPTによる難病診断のヒント長期間診断がつかなかった患者の症状をAIが分析し、病名の可能性を示唆

AIの可能性は無限大!これからどんな「面白い」が生まれる?

AIの活用事例は、私たちが想像する以上に広く、深く、そしてユニークな形で社会の様々な場面に広がっています。これは、AI技術が、「高度な専門ツール」として専門家を支援する方向と、「身近なアシスタント」として誰もが利用できる方向の両面で進化を続けており、社会の隅々に浸透し始めているからです。

これまで見てきたように、AIはアート制作からバームクーヘン焼き、赤ちゃんの泣き声診断、ブランド品の真贋判定、伝統工芸の継承支援、環境保護、災害からの避難支援まで、実に多岐にわたる分野で活躍しています。これは、AIがもはや一部の専門家だけのものではなく、私たちの生活や仕事に密接に関わる存在になっていることを示しています。

AIの可能性はまさに無限大であり、これからも私たちが想像もしなかったような、面白く、社会の役に立つ活用法が登場するでしょう。AIに対して過度な期待や恐れを持つのではなく、「こんなことに使えたら面白い」「私たちの社会はどう変わるだろう?」という好奇心を持ってその進化に注目し、その可能性と限界を理解していくことが、AIと共存する未来をより豊かにする鍵となるのではないでしょうか。

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